大切な人に贈りたくなる、なないろのボトル。糀から丁寧に作った『にじいろ甘酒』。
平成も終わりに近 づく2015年頃、過去に類を見ないほどに甘酒市場がブームを迎えていた。3年ほどで市場は3倍以上に伸び、その栄養素の高さや美容効果に注目が集まり、大手メーカー各社もこぞって甘酒商品を発売していた。
そんなブームよりもはるか前。浦野醤油醸造元では、これまでにない全く新しい甘酒が生み出されていた。それが『にじいろ甘酒』シリーズだ。

「これが『にじいろ甘酒』シリーズです。プレーンの発芽玄米以外に、黒米や八女抹茶、福岡あまおうなど、色んな味があります。私と同世代の女性にも手に取ってほしくて、素材に合わせてカラフルなラベルを作ったんです」
にじいろ甘酒は、その名前の通りカラフルで美しい見た目も印象的。とても甘酒には見えない、オシャレな商品だ。自宅用はもちろん、大切な方への贈り物などに選ばれることも多いのだとか。
「糀はもちろん、素材は全て福岡県産です。福岡の特産品を使って、福岡を代表するような商品に育ってほしいなと思っています」

◆甘酒は、ご年配の飲み物だった?
「私が嫁いできたころって、甘酒はご年配の飲み物でした。当時はブームでもなんでもなかったので、道の駅に商品を置いても、売れるのは1日に数本だったんですよ。なのにすっごく手間はかかって…。糀もどっさり使うし、作るのに何日もかかるし…」
確かに10年以上前は、甘酒といえばご年配が飲まれることが多く、また米糀ではなく酒粕で作られたアルコール入りのものが中心だった。
「でも、甘酒の良さをもっと同世代の女性たちにも知ってもらいたかったんです。だから女将さんに作り方を教えてもらって、自分なりに色々と試行錯誤していました。なかなかうまくいかなくて、大変だったんですよ」

◆飲み口。味。そして、見た目。
「試行錯誤している中で、黒米を使った甘酒ができたんですよね。それを売ってみたら、意外と売れて。これはいけるかもしれない、と。そこからはブルーベリーを入れたり、女性や子供でも飲みやすい味わいを目指してみました」
昨今ではフルーツを入れた甘酒もたまに目にするようになったが、当時はそんな商品は全く皆無。文字通り試行錯誤しながら、新しい商品を生み出していったそうだ。
「あとは飲み口ですね。甘酒ってどろっとした感じですけど、もっと飲みやすくさらりとさせたかった」
浦野醤油醸造元の甘酒は、驚くほどさらっとしている。私事で恐縮だが、実は小さなころから甘酒が得意ではなかった。しかしにじいろ甘酒はその飲みやすさや口当たりの良さもあり、美味しく頂けてしまう。
「見た目も大切にしました。女性に興味を持ってもらうためには、やっぱり商品のデザインも大切ですよね。ちょうどそのころ、いくつか手ごたえのある味が出来ていたので、『これは7色つくって、にじいろに出来るのでは!?』と思って」

◆甘酒の可能性を広げ、福岡を代表するお土産に。
浦野醤油醸造元は、毎月のように何かのメディアで目にする。テレビではリポーターや芸人が取材に訪れ、雑誌やwebメディアではいつもどこかで商品が紹介されている。百貨店や各地のお土産売り場などでもよく見かける。
「にじいろ甘酒を発売したあとに発酵ブーム・甘酒ブームが来たのもあり、すごく注目してもらえました。同年代の女性にも手に取ってもらえるようになったのは嬉しいですね」
甘酒という商品に新しい価値を乗せ、今や福岡を代表するお土産の一つになったと言っても過言ではない。

◆これからも、新しい色を届けるために。
「にじいろ甘酒は、通年商品のほかに季節限定品も出しています。地元福岡の特産品や旬の食材を使って、これからも新しい味の甘酒を作っていきたいと思っています」
浦野醬油醸造元には、大規模な工場は無い。江戸末期から続く小さな醤油蔵で、丁寧に手を掛け、時間を掛けて作られた甘酒。ぜひ一度味わってみてほしい。